・武漢艾可亜人材諮詢有限公司
                                                                                                                  1.米中通貨同盟について2.本コラムに対する読者からの感想について
                                                                                                                  1.米中通貨同盟について

                                                                                                                  本コラムの読者から、PHP VOICE 2月号の記事、日高義樹(ハドソン研究所主席研究員) 「米中通貨同盟に備えよ」が、現状の米中関係を見るうえで大変参考になるから読んで感想を聞かせて欲しいという連絡がありました。
                                                                                                                  その時日本におりましたので、本屋で探しましたがどこも売り切れで手に入りませんでしたので、上海に戻ってからキンドル版で買って読みました。

                                                                                                                    

                                                                                                                  確かにこの情報は、中国でビジネスをしている私の現場感覚的からもとても腑に落ちる内容で、われわれビジネスマンにとっても大変重要な情報と思いましたので、この記事を要約し紹介させていただきます。

                                                                                                                   

                                                                                                                  【記事の要約】

                                                                                                                  (1)2012年冬、米国財務省高官とSWIFT(国際銀行間通信協会)に出向しているホワイトハウスの国家安全保障担当補佐官が極秘で北京を訪問した。
                                                                                                                  目的は、人民元とドルの共存体制を協議するための下準備を行うことだった。
                                                                                                                  これは、41年前に極秘に北京入りしてその後の日中、米中の国交正常化につながった、キッシンジャーの訪中に匹敵するものであった。



                                                                                                                  (2)その数ヵ月後、カルフォルニアのリゾートで、オバマ大統領と習金平主席の会談が行われた。公式記録は残っておらず、「米中の首脳がお互いをよく知りあうための個人的な話し合いだった。」といわれているが、それは明らかな嘘であった。
                                                                                                                  実態面では、その会談の直後から、破綻しつつあったドルとそれまで国際通貨としてまったく力を認められていなかった人民元の通貨に変化が起きた。

                                                                                                                  1)これまで長い間続いた米ドルと人民元をめぐる両国の対立が収束し、人民元は、ほぼ固定された額でドルにペッグされたとみられる。

                                                                                                                  2)米国は、人民元を国際通貨として通用させるために手を貸すことになった。

                                                                                                                  <1>中国は、カザフスタンと10億ドルに上るスワップ協定を結び、アルゼンチン、ベラルーシ、インドネシア、マレーシア、韓国、アイルランドとスワップ協定を結んだ、それと前後して、ブラジル、ロシアとも貿易決済に人民元を使うことを検討し始めた。

                                                                                                                  <2>中国は、東南アジアの国々の債権を大量に買い入れ、東南アジア諸国の通貨の交換レートの切り上げに協力し経済安定に寄与した。これにより人民元の国際化が定着する。

                                                                                                                  <3>中国は、米国政府の了解の下に、アフリカの国々の通貨(通過)と債権を買い入れる動きを強めている。これによりアフリカ経済安定の先兵としての機能を果たし始めている。

                                                                                                                  <4>米国は、中国が石油の代金としてイランやイラクに人民元を支払うことを認めた。



                                                                                                                  (3)これらは、米国にとっては、膨大な財政赤字により安くなり続けるアメリカドルの崩壊を防ぐために、中国と通貨同盟を結んだことを意味する。
                                                                                                                  中国は、目減りを続ける米国のドル資産を買い続けることを約束した。「中国は米国のドルの罠にはまってしまった。」とワシントンではささやかれていたが、中国もそれに対する相当な見返りも求めている。



                                                                                                                  (4)ここにいたる過程では、米国は、国際決済システムであるSWIFTを使って中国の金融活動を徹底的に洗い出し、中国の指導者や政治家たちの賄賂や汚職の情報を調べ上げ、それを元に中国を脅した一面もあった。



                                                                                                                  (5)国際的な常識では、この種の重要な取り決めは条約の締結などによって行われる。しかしながら、密かな話し合いで世界を変えてしまうのが、現在のアメリカと中国の指導者のやり方。



                                                                                                                  (6)米国の財政破綻と税金をめぐる国内の分裂は深刻で、中国との通貨同盟は米国の財政の生き残りをかけた最後の戦略。



                                                                                                                  (7)中国が破産しそうなドルを買い続けてアメリカ財政を助けることになったが、人民元の国際化と安定的な貿易関係といった経済的な見返りを得たほか、米中関係はこれまでと比べようのないほど安定することになった。



                                                                                                                  (8)米国はこれからも、米国病とも言える浪費と怠惰な生活を続け、中国はこれからも安い人民元を維持することにより共産主義的な体制を維持し続けることになる。
                                                                                                                  すなわち資源と人間を浪費し国民をだましながら、専制主義により非人道的な政治を続ける。



                                                                                                                  (9)中国は、政治的、軍事的にも、これまで以上に米国を恐れずにやりたいことをやる立場を手に入れた。米国議会の経済戦略委員会は、以下のように指摘している。
                                                                                                                  「2020年には中国が海軍戦力を中心に20%ほど拡大し、この結果、西太平洋における米国の軍事的な立場が弱くなってしまう。」これに対し(たいし)、米国は更に軍事費を縮小しようとしている。
                                                                                                                  これにより、中国が米国の干渉を受けずに太平洋における活動を拡大強化できる環境が整いつつある。防空識別権の問題もこの延長線上にある問題。

                                                                                                                   

                                                                                                                  (10)これにより日本の立場は急速に悪化している。日米安保条約も、米国にとって時代遅れのものになってしまった。米国は新しい兵器体系と基地の再編成を急速に進めており、その結果極東戦略も大きく変わっている。日本の専門家は気づいていないが、戦略とは、基地の配備や配列の問題であり、日米安保条約もそこにつながる。米国は、独立した日本が基地をソビエトに与えるのではないかと恐れて日米安保条約を作った。日本人はもう一度日米安保条約の根源をしべて見る必要がある。



                                                                                                                  【高田のコメント】

                                                                                                                   

                                                                                                                  日高氏が在籍するハドソン研究所は、米国の保守系シンクタンクで、日高氏自身も米国の国防省ともパイプがある方のようですので、米中の軍事バランスに関しての論評はやや米国の国防省よりの見方とも感じられました。
                                                                                                                  とはいえ、どの程度の密約があるかどうか別として、実態として日高氏が語る方向に米中関係が進んでいるのは確かなようです。

                                                                                                                    

                                                                                                                  記事の内容は、日本にとっては、長期的に見て、忌々しき事態ではありますが、反面中国に進出しているビジネスマンにとっては、米中関係、ドル人民元レートが安定するということは、目先悪いことではありません。
                                                                                                                  中国における日系の工場はこれからも安定的に製品を世界に輸出できるいうことです。
                                                                                                                  労働コストの上昇で、一定以上の付加価値があることが条件ですが。日本では、またまた中国の崩壊を予測する論評が多く出回っているようですが(ここ2、30年間、崩壊するというひとはずっと崩壊するといってますが。
                                                                                                                  )、この記事によると中国が崩壊するときは、米国も崩壊するときとも見えてきます。
                                                                                                                  もしかしたら、大きな問題を抱えた超大国どうしがお互い寄りかかり、崩壊を防いでいるのが現状なのでしょうか。
                                                                                                                  我々ビジネスマンとしては、他国の崩壊を心配、期待するよりも、そうした大局も睨みながら、目先の5年、10年でしっかり儲けるべきところはしっかり儲けるという方向に気持ちをき切り替えて方がいいのではないかと思いました。
                                                                                                                  それにしても、我々日本人は他国の心配をする前に、日本自身の先行きを心配したほうがいいのではないかとこの記事を読んで思いました。
                                                                                                                  我々ビジネスマンがこつこつと積み上げた成果を他国にさらわれることのないように。



                                                                                                                  尚、文中にある人民元のドルペッグ制は実際どのように運営されているかについては、記事にはありませんが、私が、最近上海の邦銀関係者から聞いた話では、ここしばらく米ドル人民元レートは、中国の消費者物価指数と連動しているとのことでした。
                                                                                                                  もしかしたら、これが米中の密約、又は黙諾かもしれません。つまり、中国は食料と資源の輸入も多いですので、消費者物価が上がった分、人民元が高くなれば、結果、物価の上昇を抑えられます。
                                                                                                                  中国の政府にとって、民衆に不満の高まりと一番恐れていますので、このレート調整ルールは納得できます。





                                                                                                                  2.本コラムに対する読者からの感想について

                                                                                                                  先日発信しました「中国からの撤退に関わる日経新聞の記事について」について、読者(日系自動車部品メーカー)からの感想を寄せていただきましたので、本人了解を経て紹介させていただきます。



                                                                                                                  なるほど最前線で苦労されている方ですので、色々とリスクを考えておられます。日系企業側が事前に確認していなかったために、被害的な報道が後でなされているという分析もうなずけますね。感想ありがとうございました。



                                                                                                                  【読者からの感想】

                                                                                                                  私はコンサルタントではありませんので、多くの事例や経験を持っている訳ではありませんが、弊社の移転を巡ってこの3年間、前線で対応してきた中では、少なからずリスクがあると感じました。
                                                                                                                  結果的には、弊社は優遇政策の恩典は受けていませんでしたので、影響ありませんでしたが、ある、親しい幹部との懇親の中で、優遇政策を受けていないかの確認とその場合の優遇受けた分の処理(端的に言うと、返せ)について、ややこしいと。
                                                                                                                  表現としては、返せとはいえないが、形を変えて、返させられると。また、こうも言いました、どういう形で進出してきたのか。どこの批准か。



                                                                                                                  弊社は、撤退するというような事態、考えはありませんが(出資比率の変更はあり得ますが)、一応、リスクとしては頭に入れてあるのと、2名ほどの中国人の有力な友人を個別顧問として常に情報交換する体制にしています。
                                                                                                                  中国は、一面では、判断できないことが、多く、被害的な出来事の背景には、実は日系企業側が事前に確認していなかった。
                                                                                                                  検討不十分でGoかけて、後で、えっそうじゃないの?という案件が、被害者的に、報道されていることもないとは言えないと感じています。ようは、中国素人があさはかな判断で進めて、最後の問題だけを中国リスク(日本では可能なの、できない事)として騒いでいるのかも知れませんね。
                                                                                                                  私は、意外とこの問題の方が大きくて、皆さん、もっと勉強し、正しい判断と、正しい情報発信をと思うのですが。。。

                                                                                                                   
                                                                                                                  CMSならドリーマASP