・武漢艾可亜人材諮詢有限公司
                                                                                                                  1. 70年談話に対する中国の反応2. 中国経済と中国株式市場の先行きについて3. 東芝事件に「孫子」を思う
                                                                                                                  長らくご無沙汰いたしました。
                                                                                                                  いかがお過ごしでしょうか。
                                                                                                                  お盆は熱海で過ごし、その後千葉の茂原に母のお墓前り行き、昨日上海に戻りました。
                                                                                                                  今回熱海で、素敵なお店を二つ発見しました。
                                                                                                                  一つは、創業40年の「くろんぼ」という名前のU字型のカウンターの10席のみのレトロなコーヒーショップで、サイフォンでいれたフルーティーな美味しいコーヒをいただきました。
                                                                                                                  夜は、名前は忘れましたが、パリの一角を思い起こさせるようなこれまたレトロな感じの素敵なワインバーを発見し、リーズナブルだけど美味しワインをいただきました。マスターはソムリエでフランスでも修行していた方だそうです。フレンチのつまみも良かったです。
                                                                                                                  午後の4時過ぎに海水浴場の一番沖の方を泳いでおりましたら、
                                                                                                                  突然の大粒の天気雨がザーッと降りましたが、心も体も洗われるようで本当に気持ちよかったです。さーこれから空気の悪い上海に帰って頑張るぞと、勇気が湧いてきました。

                                                                                                                  1. 70年談話に対する中国の反応

                                                                                                                   中国外交部の声明、人民日報を読んでみましたが、まずます、冷静な反応といえるのではないでしょうか。
                                                                                                                  中国が一番気にしていた首相の靖国訪問は回避されましたので、中国としては想定の範囲内で、
                                                                                                                  今後、日中関係が急速な親密化はなくとも、普通の関係に進む前提条件はそろったのではないでしょうか。
                                                                                                                  以前、このコラムでも紹介しましたが、ある中国の高官と話をしたという友人は、
                                                                                                                  春の時点で、今年の8月は安倍首相は靖国を訪問せず、
                                                                                                                  その後、日中関係は進展すると自信を持って言っておりましたので(おそらくそういう暗黙の了解ができていたということかと)、
                                                                                                                  私としても、この前提で今後日中のビジネス環境がより改善することを期待したいところではあります。

                                                                                                                  (1)中国外交部の声明では、以下の点が今回の70年談話に対する反応と思われる内容以外は、
                                                                                                                  これまでの中国の歴史問題に対する認識、主張を繰り返し述べたものであったと思います。

                                                                                                                  「在国際社会共同紀念二戦勝利70周年的今天,
                                                                                                                  日本理応対那場軍国主義侵略戦争的性質和戦争責任作出清晰明確的交代,
                                                                                                                  向受害国人民作出誠執道歉,干浄徹底地与軍国主義侵略歴史切割,而不応在這个重大原則問題上作任何遮掩。」

                                                                                                                  日本語訳:国際社会がともに第二次世界対戦の勝利を記念する今日、
                                                                                                                  日本は、あの軍国主義侵略戦争の性質と戦争責任に対し明確な意思表明を行い、
                                                                                                                  被害国の人民に対し誠意ある謝罪を行い、かつ、軍国主義侵略の歴史を綺麗に切り離すべきである。
                                                                                                                  この重大な原則問題においていかなる覆い隠すことをしてはならない。

                                                                                                                  「明確な意思表明」、「覆い隠すことをしてはならない」は、
                                                                                                                  70年談話が、間接的な謝罪、反省にとどめたことに対する牽制のことばなのだと思いますが、
                                                                                                                  談話自体を否定する内容はありませんので、中国としては、今後、日中関係を改善する意思があるものと理解しました。

                                                                                                                  (2)一方、人民日報の記事では、「一言で言えばごまかすのが上手すぎる」、「反省と謝罪に直接言及するのを回避した」、
                                                                                                                  「侵略と植民行為に直接言及しなかった」、「日本は今後謝罪する必要がないとした」、「
                                                                                                                  女性の犠牲者に言及したが和解も主張した」など、より具体的に70年談話を牽制する表現が見られました。
                                                                                                                  更に、村山談話にも言及し、この内容は中韓と日本の正義の人士に肯定されているとした上で、日本の安保法案は、
                                                                                                                  日本でも批判されているとし、この法案により、
                                                                                                                  日本は「専守防衛」から、「主導的な進攻」に展開すると自論を展開しています。

                                                                                                                   中国にとっては、歴史問題は原理原則論として妥協できないポイントですが、
                                                                                                                  人民日報に展開されている日本の安保法案の問題の方がより目先の懸案事項で、
                                                                                                                  それを牽制するために、歴史問題でも釘をさすということで、
                                                                                                                  これまでこれまでの方針、論調と大きく変わることはないと理解しました。
                                                                                                                  という意味で、全体としては、これまでのプラスマイナスギリギリのところで推移していたの日中関係のポジションが、
                                                                                                                  プラス0.5ポイントくらいのポジションになったのかなという印象でしょうか。
                                                                                                                  ビジネスマンとしてはこれで十分だと思います。

                                                                                                                  2. 中国経済と中国株式市場の先行きについて

                                                                                                                    今月ある会社の社長様から中国経済の株式市場の先行くについて聞かれましたので、以下の通り解答いたしました。

                                                                                                                  (1)まず、中国バブルの崩壊について聞かれました。
                                                                                                                  私は、まず、同じ「バブル」といっても、日本の「バブル」と中国の「バブル」は、そもそもその前提条件が違うので、
                                                                                                                  日本が「バブル崩壊」で痛い目にあったからといって、
                                                                                                                  中国も同じく痛い目にあるというように連想して考えない方がいいとの話をしました。
                                                                                                                  日本が安定成長に入った段階での急激な円高の中での、
                                                                                                                  急激な引き締めによる日本のバブルの崩壊に対して、成長が鈍化したとはいえ、
                                                                                                                  まだまだ7%台を維持している中国、且つ、日本と違って米国からの円高要求に対して、
                                                                                                                  ずっと抵抗し、様子を見ながらの元高誘導をしている中国、
                                                                                                                  日本の失敗を教訓にバブルが懸念されても急劇な引き締めはせず、
                                                                                                                  更には、土地の需給を国の一存でコントロールできる点や、
                                                                                                                  国有資本が有する膨大な権益の払い下げという最後の砦がまだ残っている点において、日本との比較で言えば、
                                                                                                                  日本より、より国によるコントロールが可能なバブルなのではないでしょうか。

                                                                                                                  (2)もちろん、一党独裁故に政府の力が強すぎて、
                                                                                                                  却って経済の歪みが蓄積し、それがいつか爆発するのではないかという懸念があるのは確かです。
                                                                                                                  この点については、世界の経済学者が中国において好評された統計データの基づく分析をしていると思いますが、
                                                                                                                  その統計データ自体が当てにならないので、統計に出ない巨大な債務が懸念されております。
                                                                                                                  ところがそもそも統計が当てにならないということは、統計にのらない巨大な富がある可能性もあるわけで、
                                                                                                                  これらを合わせて見ないと本当にどのようなリスクがあるのか見えてこない、
                                                                                                                  従って不安であるからなかなか中国には思い切って突っ込むことができないというのが多くの日本企業が考えることでしょうか。
                                                                                                                  ただ、日本では、目に見えない負の部分だけが強調され、
                                                                                                                  「中国崩壊マーケット」(中国は崩壊する崩壊すると言い続けることにより経済的利益を得て生活の糧を得ている人が棲む市場)
                                                                                                                  に生息する論者たちがそれを言い続けますので、
                                                                                                                  そちらに偏った情報で物事を判断するのはバランスにかけていると思います。

                                                                                                                  (3)その歪みは、見えやすいところで言いますと、例えば、中国の建機マーケットに現れています。
                                                                                                                  今月質問のあったお客様は建機市場とも関わっているので、
                                                                                                                  特に話題になったのですが、リーマンショック後の2兆元のインフラ投資の時に、
                                                                                                                  あまりにも急激な公共投資の増加で、建機が売れすぎた結果、公共投資が減速したというか、
                                                                                                                  おそらく通常レベル戻った現在においては、
                                                                                                                  行き場を失った使用年数の若い建機が中古市場に出回って、新品がなかなか売れないそうです。
                                                                                                                  これなどは、政府の行き過ぎた財政出動の結果、
                                                                                                                  通常であれば5年で消化されたであろう建機市場を1年で消化してしまったことによる市場の先食いの結果ですね。
                                                                                                                  ただ、中国経済が崩壊しないで、
                                                                                                                  このまま7%でも6%でも5%でもじりじりと成長して行けば、
                                                                                                                  いつかはまた新品の建機が売れる状況に戻ってくるはずで、
                                                                                                                  後は我慢比べということにあるわけですね。
                                                                                                                  ですからこの社長さんが知りたかったのは、
                                                                                                                  我慢比べしてまっていればいずれはまたチャンスがくるかどうかということでした。

                                                                                                                  (4)そうなりますと、統計データが当てにならない以上、
                                                                                                                  後は中国共産党政権の政策運用能力を信じるか信じないかの問題になってくるのではないでしょうか。
                                                                                                                  中国に20年以上生活して、変化の激しい経済運営の実態を見てきた私としては、
                                                                                                                  そのときどきでヒヤヒヤしながらもなんとかやり過ごしてしまう、
                                                                                                                  中国の政策運営能力に対して一定の安心感を持ってしまいますが、
                                                                                                                  この社長さんによると、取引のあるある日本の超大手メーカーの中国総代表も概ね私に近い考えであるそうです。
                                                                                                                  長く中国にいるとそう見えてくるのでしょうか。
                                                                                                                  もちろん、過去においてよかったから、これからもいいとの保証はありませんせん。
                                                                                                                  ですから、現政権の政策運用を日々観察する必要があるのだと思います。

                                                                                                                  (5)こうした意味で、現政権を見てみますとどうでしょうか。
                                                                                                                  経済的には、政権発足当初に李可強首相が今後の経済政策の方向性を発表しましたが、
                                                                                                                  企業側として見ていて実現できていると感じられるのは、土地使用権の払い下げの錬金術と不動産投資、

                                                                                                                  公共投資に頼った成長路線を修正したことと、それに伴ってきた金融政策を修正したことくらいしか見当たりません。
                                                                                                                  これはこれで大変なことですが、
                                                                                                                  当初成長の目玉と目された国有資本の権益にメスを入れる部分は既得権機を有する側の抵抗にあってか進んでおらず、
                                                                                                                  抵抗勢力と目される実力者の汚職摘発ばかりが目立っておりました。

                                                                                                                  (6)ただ、共産党中央委員会の常務委員経験者が摘発されるに至り、こうした戦いも一段落で、
                                                                                                                  これからはより独自路線を表に出した新たな政策運営に集中できるかというころで出てきたのが、
                                                                                                                  株式相場の大相場というわけです。
                                                                                                                  これは私の勝手な解釈ですが、やっと摘発も一段落したので、現政権としては、
                                                                                                                  株式市場の活性化を一つの目玉の政策として出してきたのではないでしょうか。
                                                                                                                  これまで多くの上場待機銘柄も上場できずにおりまし、
                                                                                                                  そもそも、経済政策もおいては過熱を抑えるような動きばかりが目立っておりましたので、
                                                                                                                  ここでやっとで前向きな元気が出る政策を出すことができたわけです。
                                                                                                                  しかしながら、中国の株式市場は、現政権が考える以上に怪しいプレーヤーたちに侵食されており、
                                                                                                                  今回の相場も、一般庶民の蓄えをおびき出し、結局儲けたのはその筋の人たちだけということも十分ありえそうです。
                                                                                                                  現政権のトップ二人も、庶民を敵に回すことなど毛頭考えていないはずですので、
                                                                                                                  正直後でしてやられたと感じているかもしれません。
                                                                                                                  ただ、今回の株式市場の暴落で中国の経済が急減速するとか、日本に旅行に来る中国人の数が急激に減るような自体には今の所なっておりませんし、そうなるような実感が感じられないのが正直な気持ちです。
                                                                                                                  今回の人民元の下方修正は株式市場の影響あるのかもしれませんが、この程度の修正で実態経済にどれほどの影響があるのでしょうか。

                                                                                                                  (7)なお、中国の株式市場の実態については、
                                                                                                                  2007年に私が中国の友人と共著で「中国の株式市場の真実」という題名で上梓しております。
                                                                                                                  http://www.amazon.co.jp/中国株式市場の真実―政府・金融機関・上場企業による闇の構造-張-志雄/dp/4478001588/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1439780280&sr=1-1&keywords=高田勝巳
                                                                                                                  ここではインサイダー取引、仕手取引が横行する中国の株式市場の実態が紹介されております。
                                                                                                                  この書籍は、中国語版も出されており、
                                                                                                                  この中国語版は中国証券管理監督委員会のトップも読むほどの業界では知る人ぞ知る書籍となりましたが、
                                                                                                                  残念ながら、中国の株式市場の闇の実態は、基本的には2007年当時の実態と変わらないようです。
                                                                                                                  その後改善するどころか、もっと悪くなっているとも言われております。

                                                                                                                  3. 東芝事件に「孫子」を思う。
                                                                                                                   東芝の粉飾決算事件、いろいろな読み方ができると思いますが、
                                                                                                                  私に思い浮かんだ言葉は、孫子の「必生可虜也」です。

                                                                                                                  「戦いにあたり、生きることのみに執着する者は勇敢に戦わないので捕虜にされる。」。
                                                                                                                  利益には必ずリスクが伴うものですが、
                                                                                                                  リスクを負わずに利益を得ようとするとこのような結果になるのではないでしょうか。

                                                                                                                  損失の直接の原因は企業買収の失敗かもしれませんが、
                                                                                                                  メディアで紹介されているように、それを覆い隠すために、
                                                                                                                  部下に達成不可能な要求を出して叱責するだけであれば、
                                                                                                                  部下は滅多なことでは社長に反逆しないでしょうから、
                                                                                                                  社長にとっては、リスクのない行為によって生を得ようとしてと見ることはできないでしょうか。

                                                                                                                  ところが、こうした振る舞いは実は長い目で見ると大きなリスクを抱えることになりますよね。
                                                                                                                  社内の雰囲気も悪くなるでしょうし、このようにリスクを避けてきた人が、
                                                                                                                  リスクの大き買収案件で妥当な判断を処理をできるとは思えないからです。
                                                                                                                  そんな少ない報酬では株主代表訴訟で受けるリスクに見合わないと思うのであれば、
                                                                                                                  うんと儲けて報酬を増やせばいいじゃないかと思うのですが、
                                                                                                                  実際はそうはうまくいかないですね。
                                                                                                                  リスクをコントロールする能力は長い時間の実践と試行錯誤の結果、身につくものでしょうから。
                                                                                                                  最近日本の大手企業で、他社で社長の経験を積んだ人材を日本人、
                                                                                                                  外国人にこだわらず抜擢するのはこうした問題意識からきているのかもしれませんね。


                                                                                                                  『孫子』九変篇

                                                                                                                  (漢文)
                                                                                                                  故将有五危。
                                                                                                                  必死可殺也、必生可虜也、忿速可侮也、廉潔可辱也、愛民可煩也。
                                                                                                                  凡此五者、将之過也、用兵之災也。
                                                                                                                  覆軍殺将、必以五危。
                                                                                                                  不可不察也。

                                                                                                                  (読み下し文)
                                                                                                                  故に将に五危有り。必死は殺され、必生は虜にせられ、忿速(ふんそく)は侮られ、廉潔(れんけつ)は辱められ、愛民は煩わさる。
                                                                                                                  凡そ此の五者は、将の過ちなり、用兵の災いなり。
                                                                                                                  軍を覆し将を殺すは、必ず五危を以てなり。
                                                                                                                  察せざるべからざるなり。

                                                                                                                  (意味)
                                                                                                                  そのようなわけで、将軍には五つの危険(五危)がある。
                                                                                                                  死ぬ覚悟だけの者は分別がないので殺され、
                                                                                                                  生きることのみに執着する者は勇敢に戦わないので捕虜にされ、
                                                                                                                  短気に怒る者は侮られて理性をなくして敵の計略にはめられ、
                                                                                                                  清廉潔白すぎる者は辱めを受けて潔白さにこだわって敵の罠に陥れられ、
                                                                                                                  兵を愛しすぎる者は小さなことに煩わされて肝心なことに手が回らなくなる。
                                                                                                                  およそこれら五つの危険なものは、将軍の過ちとしてしてはならないものであり、
                                                                                                                  兵を用いて戦うときに災いとなるものである。
                                                                                                                  軍を敗北させ、将軍を殺してしまうのは、必ずこの五危が原因である。
                                                                                                                  よく明察しなければならないことである。

                                                                                                                   
                                                                                                                  CMSならドリーマASP