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国慶節の連休9月30日から7日の8日間、友人の中国の旅行作家と奥様、10歳の息子さんを連れて東京、山梨、長野を取材旅行しました。
コースは、東京、山梨県甲府、白州、清里、長野県 蓼科、上田市 武石、美しが丘(原)高原、松本、上高地、白骨温泉、乗鞍高原、松本、東京です。 甲府までは特急あずさで、そこから先は、松本で再びあずさに乗るまでレンタカーで私が運転手をしました。 前回は、京都のパートナーの協力も得て、京都を案内、その内容は立派な旅行記になり、好評とのことです。 近く、中国のメジャー出版社から全国出版されることになりました。 私にとっては、全くボランティアベースの活動ですが、日中の架け橋になることが私のライフワークですので、本望です。 彼にとっても、中国人が爆買ばかりでなく、日本の本当にいいところを一般の中国人にも知ってもらいたいという気持ちでこの仕事をしておりますので、 私のネットワークを駆使して特別な旅を用意しました。 長野県にも、このコラムを読んでいただいている農業関係の方々がおられ、今回も色々とお世話になりました。 清里では、私のパートナーがお手伝いをしているホテルのオーナーにも心の籠ったおもてなしをいただきました。 以下、旅の途中でであったエピソードを幾つかご紹介したいと思います。 1. 清里のホテルでの日中経済談義。 ここでは、ワインを飲みながら、日本のバブル経済の総括と日本と中国経済の先行きをめぐる熱い語り合いになりました。 実は、この作家、中国で有名な経済アナリストでもあり、中国でも相当な影響力を持っている人です。 日本のバブル経済の実態について熱心に研究をしており、自分なりの見識は持っているものの、実際はどうであったのか知りたがっておりました。 今回、清里のホテルの手配をして迎えてくれたのは、日銀出身の田口さん、彼は正にバブルの始まりから終わりまでの最前線の現場で実際のオペレーションに携わった経験のある人ですので、自ずと、話は日本のバブル経済の話になりました。 その発生から、崩壊、その後の20年からアベノミクスまでの流れです。 中国の作家から一つ一つ的を得た質問が出され、それに対して田口さんが一つ一つ丁寧に説明をしました。 中国の作家は、これまで自分が分析して想像していた実態とほぼ重なったが、実際に現場で関わっていた人と話したのも初めてだし、現場にいた人でないとわからない発見もできたということで、興奮、感動しておりました。 バブルの処理でどのようなポイントを日本として反省するべきか、詳細は省略いたしますが、 このようなバブルの崩壊は、日本ばかりでなく世界的にみても初めての経験であったので、日本政策決定者にとっても想定外のことばかりであったということがあったようです。 世界にとっても経験のないことですので、欧米の金融当局のしかるべき人たちも、昨今の金融危機にあたっては、日本の経験に学ぼうと熱心にヒアリングに来たそうです。 それが現在の欧米、中国も含めた金融当局の政策決定のベースになっているわけです。そういう意味で、日本は世界の反面教師になっているわけですけど。 田口さんからも作家に質問がなされました。中国経済の先行きです。 その答えは極めてシンプルで、これまで日本が経験し、今も経験している道のりを中国も歩むというものでした。 元高、バブル、エネルギー、少子高齢化、年金、農業、環境などなど、だから、日本がバブル崩壊の成り行きと現在に興味と示しているわけです。 面白かったのは、現在の中国のトップと日本のトップがよく似ているところがあるという話です。 少々きわどい話ですので、ここではやめておきますが、経済政策でいえば、両者の政策では、日本も中国もゆきずまりを解消できないという指摘は的を得ていると思いました。 では、ゆきずまりを解消するはなるをすればいいのは、その答えは、次に訪問した、長野県の農村で見えてまいりました。 2. 蓼科で有機不耕起 農法で稲作をする安江さんとの農業と地方再生談義。 安江さんは、現在72歳で、もともと土木、建築、不動産開発をされていた実業家です。 現在は引退されて、田んぼを借りて有機不耕起 農法で稲作をされています。 私も、昨年から美味しくて安全なお米を安江さんから譲っていただいております。安江さんは、私のコラムを読んでいただいており、よく質問やご意見もいただいております。 私は、安江さんのメルマガ「蓼科便り」http://tateshinadayori2.blogspot.com/ の読者でもあります。 不耕起 農法とは、水田を耕さずに苗を植え、水を深めに(20センチ)溜めてある意味ほったらかしにして稲を育てる方法のようです。 おそらく稲が自生していた状況に近いのだと思います。水も深めです。田植えをするときに耕した田んぼよりは硬いので、特殊な田植機を使うそうです。 水が深いので、除草剤をまかなくとも、雑草はあまり生えないそうです。 ために出てくる雑草を手で抜けばすみ程度だそうです。化学肥料は使わず、酵素を使った有機肥料をつかっているとのことです。 結果、丈夫な稲ができ、隣にあった通常の田んぼの稲は風で倒れている稲が目立ちましたが、安江さんの稲は一つも倒れていませんでした。 子供を育てるのと同じそうです。甘やかすと弱くなると。 収穫量は、通常の農法よりは少なめだけど、価格は有機米ということで通常の三倍なので、これを事業としてやれば全く採算とれるということです。 安江さんは、ご家族と知人たちに配るために作っているので、これ以上大掛かりにするつもりはないようですが。 そんなにいいならなぜ周りに人はしないのですかと聞きましたら、ほとんどの農家は兼業農家で高齢化しているから、全く違う農法を今から取り入れようとはしないそうです。 安江さんも1年間、毎月不耕起 農法の先生のところに通って勉強したそうです。若くてやる気のある人が事業としてやるつもりなら十分有望だそうです。 安江さんは、同時に有機の畑もされており、自宅で食べる野菜の他、枝豆や小豆なども生産されています。 安江さんのお宅で枝豆をいただきましたが、その味の濃さ、美味しさにみな驚いておりました。 玄米と黒い小豆を炊いたご飯もいただきましたが、 このご飯は70度の電子ジャーで一週間以上持つそうで、時間が経った方が味がよくなるそうです。 今回いただいたのはその日の朝炊いたものでしたが、おかずがなくともそれだけで十分美味しいものでした。 最初に、安江さんが手配してくれました地元の鯉料理の料理屋でお昼を取りながら話をしました。 安江さんは、メルマガで、日本の農業と社会に対してもいろいろと提言をされている方ですので、今回、そのような話を中国の作家にも話していただきたいとお願いしておきました。 安江さんは、中国のこともよく研究されておりますので、中国も日本と同じ問題を抱えているはずだと、最初に語られ、作家もその通りだと応じておりました。 そこで安江さんは、元カルビー株式会社社長の松尾雅彦氏しが書かれた「スマート・テノワール」という本を紹介してくれました。 このままでは日本の農村が消滅してしまう、もし、農村が消滅したら東京も消滅すると安江さんはおっしゃいました。 その処方箋として、農村を周辺の複数の地域をまとめて自給圏を作り、農業と経済を活性化する方法をこの本は説いております。簡単にいえば以下の通りです。 (1)日本の食料自給率39%。その内、米は自給率97%、野菜は76%であるが、小麦は12%、油脂類は3%、畜産物16%とカロリーベースとなっている。 実は、この部分で日本人が摂取しているカロリーの半分以上を占めている。 (2)この部分は、現在の放置された不耕田を(水田の40%が余ってる。特に斜面が適する)を畑に変えることにより小麦、大麦、トウモロコシを生産し自給率を上げることができ、 もともと輸入に頼っていたこの部分を自給圏内で自給することのより、お金と働く場所が地元に残ることになる。地元に食品加工場上を置くこともできる。 (3)経済的には、さらに影響の大きのがエネルギーで(日本の輸入総額81兆円(2013年)のうち、約9兆が食料、約27.5兆が燃料で合わせると約45%が食料とエネルギーになるが、 このエネルギーも全部は無理でも、一部だけでも材木のペレットなどの森林資源を活用することにより、地元経済に還元することができる。 (4)上記により、若者の就業も確保される。 (5)また、日本の出生率が低いのは、都市に出て行った若者の出生率が低いとみるべきで、農村の出生率は高いので、都市に流れていた若年人口が農村に戻れば、日本の出生率そのものが上向くことが期待できる。 なるほど、これは、実現できればアベノミクスの第三の矢よりもいいかもしれませんね。ただ、米国の権益ともぶつかるので高度な外交力も必要ですね。 TPPとの絡みではどうなるのでしょうか。またこうした論点は、中国の農業、経済問題とも重なり、十分問題意識を共有できそうな問題です。 作家もこの話を聞いて、すぐにでも中国語に翻訳し、中国でも出版したいということで、まずは私がサマリーを作って彼に見せることにしました。 この時作家から提案があったのは、前日に話題になたマクロ経済政策ばかりでなく、日本はこのように中国にとっても参考となる経験、情報が山済みになっているので、 このような日本の財産を中国に翻訳紹介するために有志で少しずつ資金を集めてファンドを作りたいということでした。 同時に、双方向で、中国の情報も日本に伝えたいということです。今後実現化する過程でみなさんにも協力をお願いするかもしれませんので、その時は宜しくお願いいたします。 その後は、安江さん水田と畑を見せていただき、安江さんのお宅で美味しい玄米と枝豆とご馳走になり、宿泊する、武石の農家、小林さんのお宅に向かいしました。 3. 日本のアグリツーリズムのパイオニア、小林さん宅での民泊と農業談義。 小林さんは、上記の安江さんと同じ機会、確か5年くらい前に知り合い、私のビジネスコラムも読んでいただいている方です。 今回、長野県の農村を旅したいとがどこがいいかと安江さんい相談しましたら、それなら小林さんのところがいいだろうといことで改めてご紹介、連絡いただきました。 小林さんは、信州せいしゅん村(http://www.murada.com) を運営されている方です。 海外や都会からの農業体験と農家でのホームステイを受け入れる農家を組織して、運営させております。ご興味ある方はご紹介しますのでご連絡ください。 小林さんとは、作家も交えて、夕食、朝食の時間、また、村を散歩する時に、色々と意見交換することができました。とても興味があったのは、以下のお話でした。安江さんのお話とも通じるところがあります。 (1)家族四人が、農業だけで生計を立てられないということは、いずれ農村は荒廃するということ。農村が荒廃すれば東京も存続できなくなるはず。 反対に農村が豊かになれば、日本はまだまだ成長の余力があるはず。 (2)日本の農業所得に占める補助金の直接支払の割合は15.6%、米国が62.4%(販売価格は安いが、農家には生産費に見合う水準までの不足分が直接支払される。 米・小麦・トウモロコシ・大豆等)、フランスが90.2%と農業大国の農家は全て政府の補助金で成り立っている。 補助金がいいことかどうか別としても、外国と比べてこれだけの差があることは、いかにもアンバランス。放ってけば、日本の農業の成長の足かせになることは明らか。 TPPの話でこうしたの補助金がどのような話になっているのでしょうか、日本のメディアではそのような論点は目にしておりませんが、ご存知の方がおられたら教えていただきたいです。 もし、米国のの産物の輸出でこれだけで補助金が出続けて、それを日本が関税なしで輸入するのでしたら、それはあまりにもアンバランスですね。 ただ、中国の農業は、日本よりもっと厳しい状況に置かれているかもしれないと、中国の作家はもうしておりました。 最近の日本のニュースを見ておりますと、中国のGDPが7%を下回った、本当ももっと低いはずだということで日本も大変だと大騒ぎしておりますが、 他国の経済に依存する他力本願ではなく、まずは、自国内でやるべくことがあるのではないかと思うのですが。 どうも、中国、中国と騒いで、問題の核心をぼかそうとしているような気がしてしかたありません。 中国は脅威だ脅威だと騒ぐ一方で、その脅威の中国の経済の調子がいいの悪いのと一喜一憂する、なにか変な感じがするのは私だけでしょうか。 日本はもっと精神的に自立できないのでしょうか、と思います。リーマンショック後に中国の景気浮揚策に世界が乗っかりすぎた一面もありますので、日本だけの問題ではないですが、 中国も各国におだたられて、世界経済のけん引役と張り切りすぎた結果が、今の調整局面ですよね。 悪い言葉で言えば、世界がミソもクソも中国に食わせたのだから、中国も消化不良をおこしますよね。 それを中国崩壊と嬉々として報道する日本のメディア、そんなに中国経済の影響が大きなら、中国が崩壊するなら、米国も、EUも日本も崩壊するのでは。 まずは、自分の足元の問題を掘り下げるべきと思います。上記に紹介しました、農業問題は、日本にとっても中国にとっても一つのキーポイントになるのは間違いないと思います。 昨年来近現代史を勉強会をしていて、先生の言葉に思わず唸ったことがありました。「第一次大戦後の世界恐慌後の出口戦略として、日本は満州に出て行ったが、 日本国内、日本の農村、山村の改革で乗り切る道もあったかもしれない、それが可能であれば、無理して満州に出て行く必要もなかった。」。 グローバル経済が浸透した現在において、経済、企業活動の国際化は止められませんが、そちらばかりに頼るのか危険ではないでしょうか。それが、我々が、今、歴史から学ぶべきポイントかもしれません。 |
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