・武漢艾可亜人材諮詢有限公司
                                                                                                                  VWを救った中国の税制改革
                                                                                                                  先日上海のゴルフ場で日系企業とドイツ企業の駐在員たちとゴルフをしながら、最近の中国におけるビジネス状況について情報交換した。大変参考になる話を聞くことができたので、皆さんとも共有いたしたい。


                                                                                                                  ドイツ自動車部品メーカーの駐在員
                                                                                                                  VWを救った中国の税制改革

                                                                                                                   まずは、自動車部品メーカー駐在員の話だ。

                                                                                                                   1. VW中国は、ディーゼルエンジンの不正問題が表面化する前の、年初より販売不振であったが、10月1日より施行された1600CC未満の自動車の取得税を半減した措置(http://www.jiji.com/jc/zc?k=201509/2015092900968)によって販売が回復し、工場周辺にたまり続けていた在庫車が一気にはけてきた。それまでは前年比30%ダウンを覚悟していたが、このままだと前年並みに売り上げを確保できそうな見込み。

                                                                                                                   2. この販売の回復は、日系メーカーにもメリットをもたらしているのだと思うが、1600CC未満の売れ筋をもっているのはVWであり、この税制改正は、中国がVWを救うために出した面もあるとの見方が業界で言われている。

                                                                                                                   3. 日系自動車メーカーの友人にも上の話を聞いてみたが、概ね同じ認識であった。日系メーカーでも該当する売れ筋のモデルは好調であるが、該当するラインナップがVWほどでないと。

                                                                                                                   中国はなかなかうまいことをやったと思う次第である。正に一石二鳥。減速が言われる自国の景気を刺激しながら、ドイツにも貸しを作ったわけである。反対にドイツも中国とうまくやっているのではないか。日本の立場はドイツよりもより複雑で難易度は高いとは思うが、もう少し上手く立ち回り方法はないのか、日中関係の荒波に翻弄される日本のビジネスマンとして、今日も自問している。

                                                                                                                  日系コネクターメーカー総経理

                                                                                                                   次に日系コネクターメーカー総経理の話。

                                                                                                                   1. 中国のコスト高で、今年から各製品メーカーの製造ラインがタイと日本に移りつつある。タイは人件費が中国の半分位でコスト面で有利、日本はお客様との技術仕様、スペック面の詰めが容易で、物流コストを入れたら安くなることもある。こうしたメーカーは、仕向け先(売先)重視で生産拠点を選定しだしており、中国は、世界の工場ではなくなって来ている。

                                                                                                                   2. とはいえ、当社では、中国国内企業向けの販売を増やし、全体の売り上げは増やしている。回収面も社内ルールに基づき当初は基本前金でやっているので問題ない。2年目からは少しずつ条件をよくしてやってあげているので、これで納得してくれれば直取引を開始する。条件が噛み合わない場合は代理店経由での取引としている。

                                                                                                                   3. 電子部品分野では、中国コネクターメーカーはまだまだ技術的に日本のレベルに追いついていない。コネクターも、製品に合わせ年々小型化・高速伝送化しており、日本製は最少ピッチが0.25ミリまで進んでいる。機能設計面でもフローティング機能など開発技術が追い着かず難易度が高いものもは作れない。日系メーカーでも3社〜4社程しか開発出来ていない。

                                                                                                                   4. 中国企業は、基本的に外国メーカーが開発し成熟した技術を真似ているだけで、独自で開発する技術を持っていないし、また人材の流動が激しく社内に技術が蓄積出来る構造となっていない為、なかなか日本企業に追いつくと言う所まではいけない。基本付加価値の低い製品では中国メーカーと競合するが、全体としてまだまだ日本メーカーの脅威というほどにはなっていない。その証拠に電気業界でドイツやアメリカ・日本が開発した商品市場は多々あるが、中国メーカーが開発した商品市場はまだない。

                                                                                                                   5. 日本の電子部品メーカー(コネクターメーカーも含め)は、アメリカ、欧州など始め中国も含め製品メーカー様の物作りを支え、裾野広く浸透して販売を伸ばしている。独自開発技術の有る部品メーカーは中国の景気後退局面下でも業績を伸ばしている所が多く有る。

                                                                                                                   なるほど、この分野では、まだまだ日本の産業界の優位性はあるということのようだ。中国においても、産業のかさ上げは徐々に進んでいるのだと思うが、印象としては、中国企業は、うまい(利益率が高い)、早い(早く回収できる)、大きい(大きな投資額で大きな規模が取れる)投資には、積極的な印象で、確かにこうした分野でダイナミックに成長している分野もあるが、コツコツと技術を積み上げる分野には、まだまだ目が向かないのか。

                                                                                                                  中国が盛んにいう産業の高度化(産業昇級)は、こうした技術の積み上げがないとなかなか実現しないのではないではないか。中国経済が伸び悩んでいるのもまさにこの点に根があるのかもしれない。そうした意味で、日中の産業界は、お互いに住み分けの仕様、提携の仕様があるのだと思う。

                                                                                                                   
                                                                                                                  CMSならドリーマASP