・武漢艾可亜人材諮詢有限公司
                                                                                                                  中国WTO加盟の半面に要注意 (日経ビジネス2002年1月21日号)

                                                                                                                  中国WTO加盟の反面に要注意

                                                                                                                   最近の新聞紙面で目につくのは、何と言っても中国の世界貿易機関(WTO)加盟に関する記事だろう。しかし、これは進出する外国企業にとって、本当にいいことがかりだろうか。「人間万事塞翁が馬」と中国の古人が言う通り、何事にも半面があるのが世の常だ。それをみつめることで新たな発展のチャンスも生まれてくる。
                                                                                                                   例えば税制面を見てみると分かりやすい。
                                                                                                                   WTO加盟による関税の引き下げは外国メーカーにとって有利に違いないが、中国にとっては一時的に税収の減少をもたらすはずだ。従って、その他の税金の捕捉率を高める動きが強まる。現に、中国版付加価値である増値税の捕捉率を高めるために、全国規模のオンラインシステムの導入が進められている。実際の運用面でも、外国人の個人所得税や企業の移転価格税制の運用強化も指摘されている。
                                                                                                                   また、外国企業に対する内国民待遇実現の半面として、優遇税制は徐徐に削られそうだ。中国地場企業との同一性が実現されることになるのも、この点だけをみれば外国企業に不利な要素であることは間違いない。
                                                                                                                   人件費などの費用計上の問題もある。現地法人に赴任する従業員の賃金と、出張で派遣される本社スタッフや技術者の費用分担を本社と現地法人のどちらが見るべきなのかという点である。最近の傾向として、いずれの場合でも日本の税務当局の運用は年年厳しくなっているようだ。

                                                                                                                  「公平は勝ち取るもの」

                                                                                                                     まだ、問題をより複雑にしているのが、中国の外貨管理の硬直性だ。例えば、出張の技術者の費用を現地法人が親会社に支払おうとしても、技術給与契約を締結しかつその契約が中国当局の許可を得ないと送金できない。こうした手当てをしていない企業は、日本で税務上否認を受け、また同時に中国でも送金をさせてもらえない八方塞がりの状況に陥る事例も少なくない。進出企業の中国政府へも不満として、「中国の税務当局は外国企業に対して特別厳しいのではないか、地域によっては恣意的な運用がなされているのではないか」という声もよく聞く。
                                                                                                                   そこでまず、万国共通の徴税ターゲットは何かを考えていただきたい。日本の税務署にも聞いてみたいが、私なりに勝手に解釈すると、・お金持ち・税金を取りやすい人、捕捉しやすい人――だろう。それが中国では、・が外国企業、・が外国人となるわけだ。ちょっと極端な言い方かもしれないが、中国では「外国企業すなわちお金持ち」という考えはまだまだ根強いので、この点は決して無視できないポイントであろう。

                                                                                                                   次に公平性の問題がある。中国にいると、「公平は与えられるものではなく勝ち取るものだ」と感じることが多々ある。中国企業はたくましいところがあり、税務面でも必要とあれば相手がお役所でも平気で訴えてしまう。税務当局を含めたお役所の方も、このような企業の反撃に備え、税法など法律の勉強にも大変熱心で、最近は運用面でもそう無茶なことは言わなくなっている。
                                                                                                                   もし、理論的におかしいと思うのであれば、行政_訟のほかに「行政異議申し立て」という方法もあり、実際にこうした法的手段により、税務当局から譲歩を引き出しいる外国企業の事例も見られるようになってきた。

                                                                                                                   最近、日本国内でも最高裁判所まで闘って勝_した例もあるように、国際社会で生き残るには、政府が作った税制に対して「不公平」と嘆くばかりでなく、時には信念を持って公平を勝ち取る勇気と気力が必要なのではないだろうか。

                                                                                                                  (高田勝巳・海外ビジネスの達人 日経ビジネス2002年1月21日号)

                                                                                                                   
                                                                                                                  CMSならドリーマASP