・武漢艾可亜人材諮詢有限公司
                                                                                                                  中国での労務管理の勘所(日経ビジネス2002年3月4日号)
                                                                                                                  中国での労働管理の勘所

                                                                                                                  中国でコンサルタントをしていて企業からの相談頻度が高いのは、何と言っても労務問題だ。これだけ日本企業の進出が増え進出企業間の競争が激しくなってくると、「うまい労務管理を行い現地社員の力を十分引き出して安定経営できるか否か」が、勝ち組に残れるかどうかの条件になっていると言っても過言ではないだろう。

                                                                                                                   中国で労務問題が発生する日系企業の主な理由を分析してみると、以下の2つのポイントが挙げられる。

                                                                                                                  第1は、意思疎通の問題だ。雇用の諸条件をお互いに明確に確認していなかったり、経営者側が従業員に過度な期待感を抱かせてしまったりする場合が多々ある。日本企業の日本での雇用慣行は、これまではどちらかというと、従業員との間の権利義務関係を明確に示さず、また、従業員に対し漠然と将来への期待感を抱かせることにより会社への忠誠心を維持してきた感がある。そうした雇用慣行は日本の高度経済成長の産物で、今では通用しなくなりつつあるのは多くの識者が指摘するところであるが、この感覚をそのまま中国に持ち込んでしまっている日系企業が多く見られる。

                                                                                                                  その結果、中国人従業員は、往々にして、経営者が考えているよりも自分に有利な条件での期待感を抱いてしまい、入社後しばらくと、不満と不信感を募らせていく。そして、うまくガス抜きができないと一気に爆発、ということになってしまう。

                                                                                                                  彼らは、最初に「あなたを雇用する条件はこうで、将来の展望_可能性はこうあるが、この点は保証できない」と、明確に説明していれば後になってごたごたと不満を述べることはない。より良い条件の職場があれば能力のある人ほどさっさと転職していく。中国の法律上、従業員は1カ月前に通知さえすればいつでも会社を辞められる。企業も、日本では雇用契約継続拒否に合理的理由が求められるのとは違い、雇用契約の期限が来れば何の理由もなく継続を拒否できる。企業と従業員の関係もよりクールなものでという認識が必要だろう。

                                                                                                                  そうした中で優秀な従業員にインセンティブを与えてモチベーションを持続させ、逆に成績の悪い従業員を適度に流動化させて労務管理の好循環を維持するのが企業の競争力向上の絶対的条件となってくる。


                                                                                                                  警戒心解く努力を


                                                                                                                     第2は、第1の問題点とも関係するが、日本人管理者の中国人に対する一種の誤解_偏見といったものだ。よく聞かれる言葉に、「中国人は自己の誤りを絶対に認めようとせず、何かと巧妙に言い訳をする」というのがある。確かに、一般的に中国人は、日本人のように上司に対しすぐ自分の誤りを認めたり、納得していなくてもとにかく謝ったりはしない。誤りを認めることで自分の責任が追及され、不利益を被ることを警戒しているのだ。

                                                                                                                   ではどう対応すればよいか。答えは簡単、従業員の警戒心を解けばよい。問題発生時、企業が取るべき行動は、「個人の責任追及ではなく、問題の所在を早期に発見して再発防止と改善を図る」ことだと根気よく諭していく必要がある。時間はかかるが、この認識が社内で徐徐に浸透してくれば、その後は好循環あるのみだ。そうした努力をせず、感情的になって公衆の面前で怒鳴ったり偏見に満ちた言葉を吐いたりしてしまえば、それだけで労務紛争に発展する恐れもある。
                                                                                                                   管理者の立場で先に述べたような愚痴をこぼしている人がいれば、それはすなわち自らが海外での労務管理ができていない、ということを十分認識する必要があるだろう。

                                                                                                                  (高田勝巳・海外ビジネスの達人 日経ビジネス2002年3月4日号)

                                                                                                                   
                                                                                                                  CMSならドリーマASP