・武漢艾可亜人材諮詢有限公司
                                                                                                                  乳幼児向け日本製品(一例:粉ミルクの場合)
                                                                                                                  bi.gif 乳幼児向け日本製品(一例:粉ミルクの場合)

                                                                                                                  【現象】 日本を訪れる中国人の多くが日本製の粉ミルクを好んでお土産に買っていく。または中国で生活する日本人が乳幼児を育てる場合は粉ミルクを日本で調達する、と言う話をよく耳にする。

                                                                                                                  【背景】 これにはどういう背景があるのだろうか? 2003年に中国で起こった悪質な国産の粉ミルクを飲んだ多数の赤ちゃんが発病、死亡するという事件をきっかけに粉ミルクの安全性が社会問題となり、政府も2004年に粉ミルクに関する国家規準を制定し、たんぱく質、脂肪、カルシウム等の栄養成分及び鉛、ヒ素等有害物質の含有率の指標を定め、管理強化に乗り出した。この基準を満たさない企業には製品没収から営業停止処分等厳しく対処している。

                                                                                                                  外国ブランドも多数進出しているが、原料のミルクに関して中国国内で調達できる質も量も限りがあるため、現在これらの外国ブランドの粉ミルク自体の生産は殆ど海外で行われており、表示上中国製のものでも中国で封缶するのみである。

                                                                                                                  これまで中国消費者の外国ブランドに対する品質の評価は一般的に高かったが、中国系企業製品のみならず雀巣(NESTLE)(スイス)社の製品からも国家基準を超える量のヨードが検出されるという問題が明るみとなり中国系企業だけでなく外国ブランドであっても過信してはいけないという傾向が出てきた。

                                                                                                                  政府当局も輸入製品に関しては、毎回商品が中国の港に着いた時点で中国出入境検験検疫局により表示ラベルと成分に関し抽出検査を行い、その基準は中国国内産に対する検査に比べると厳しい等の手段を講じている。つい最近アメリカからの輸入粉ミルクから国家基準を超える亜硝酸ナトリウムが検出され貨物を送り返されるという事例も発生している。

                                                                                                                  【外国ブランドの動向】 現在、中国における粉ミルクの主要外国ブランドとしては、高級品として美賛臣(MeadJohnson)(アメリカ)、雅培(ABBOTT)(アメリカ)、恵氏(wyeth)(アメリカ)、中級品として雀巣(NESTLE)(スイス)、多美滋(dumex)(オランダ)等があるが、日本ブランドに関しては明治乳業のオーストラリア製と森永乳業の中国製及び日本製があるようだが市場での普及率は高くないようである。 因みに外国ブランドの高級品の場合、価格は900gで180人民元(約2,700円)ほどである。


                                                                                                                  20070517101034.JPG


                                                                                                                  【日本製品が好まれる理由】 冒頭で述べた中国人が日本で粉ミルクを買って帰る理由としては、日本国内の厳格な品質管理に基づく安全性への信頼のほか次のことも考えられる。






                                                                                                                  WHO(世界保健機関)の提言を受け、日本でも中国でも共に乳幼児を育てるためには母乳が一番であり、粉ミルクはあくまで母乳代替品との位置づけである。そのため日本企業は粉ミルクの栄養成分を母乳に近づけるべく研究を重ね、母乳に含まれ乳幼児の脳の発育に大切なDHAやARA(アラキドン酸)等の栄養バランスを考えて製造している。一方、中国では先に述べた国家基準をクリアーすることが大命題であり、企業はそのための対応はするが、この基準にはDHA等の成分率に関しては、明示されていない等不十分であるとの指摘もあり、企業が自らの研究において、より母乳に近づけるというよりは、国家基準さえクリアーしさえすれば良いと言う傾向の様である。

                                                                                                                  【ビジネスチャンス】 従来は製造コストを下げるために日本企業はこぞって中国に進出したが、むしろ高価格であっても純然たる日本製であることが、逆に中国においてシェアを伸ばすのではないか。なぜならば周知の通り中国は、昨今の経済発展に伴い国民が豊かになってきているうえに、一人っ子政策をとっているため、子供はまさに「小皇帝」として大切に育てられており、わが子の安全、健康がなによりも大切で、親あるいは祖父母もそのためには子供にかけるお金にはいとめもつけない風潮があるからである。

                                                                                                                  現在、中国では国産、外国ブランド共ほとんどの会社は粉ミルクの中に赤ちゃんの脳の発達に効果があるものとして、成分率がどれくらいあるか、あるいはより母乳に近いかと言うことはさておきDHAとARA(アラキドン酸)が含まれていると缶に印刷するなどしている。DHA(魚から抽出)に関しては消費者の約90%が認知しており、ARA(肉から抽出)に対する認知率は約50%に達している。このことを踏まえるとより母乳に近づけるべく先端研究された日本製粉ミルクの商機はおおいにあるのではないか。

                                                                                                                  以上は粉ミルクの例であるが、日本の乳幼児、子供向け産業においては国内で少子化が益々進む中、マーケットの先細りは否めず、その活路として価格よりは安全性、健康志向を重視する中国消費者のマインドの変化により、世界最高レベルの品質管理、研究開発の下培われたMade In Japanの製品は高価格であっても中国において市場を拡大していくことになるであろう。

                                                                                                                  ビジネスチャンスは、時事通信社が発行している時事速報上海便に連載しております。
                                                                                                                  (毎月第四金曜日に掲載)

                                                                                                                   
                                                                                                                  CMSならドリーマASP