・武漢艾可亜人材諮詢有限公司
                                                                                                                  日中企業の双方向進出時代におけるビジネスチャンス
                                                                                                                  bi.gif日中企業の双方向進出時代におけるビジネスチャンス

                                                                                                                  これまでは、日本企業が一方通行的に中国に進出し、中国企業は海外に進出する余裕実力などないというのが当たり前の時代であった。2005年末の統計で見る限り、日本からの対中投資残高が2兆8,965億円に対し、中国の対日投資残高は約120億円と241分の1の額に過ぎない。しかしながら、中国経済の発展にともない、これからは双方向の関係となり、中国企業の日本進出が増える傾向にある。

                                                                                                                  この傾向は中国の全世界に対する対外投資の推移をみればより顕著である。累計金額で見ると、01年までは数十億ドル以下であったものが、02年から300億ドル前後に急増し、06年9月現在では700億ドルを超えるまでに増加した。このなかには、香港やケイマンなどタックスヘイブン経由で中国に再投資されている資金も相当あるので、これら全てが外国に投資されているわけではないが一つの傾向を示していることは間違いない。

                                                                                                                  こうした動きの背景となっているのは、今や世界一となった外貨準備の額だ。今年6月末の中国の外貨準備は、1.33兆ドル、日本の9,135億ドルを上回る。これまで外貨準備は米国債と政府機関債で運用されてきたが、人民元高の進行で大きな含み損を抱えている。それに対する対処として、以下の述べる外貨準備を利用した対外投資会社の設立など運用方法の多様化のほか、中国企業の対外投資により、企業の人民元資金を吸い上げ、外貨を海外に投資させることができれば、増える一方の外貨準備を減らすことができる。このため、中国政府は中国企業の対外投資の推進に熱心だ。又、こうしたなかで、本年3月、中国政府は、外貨準備を原資として対外投資を目的とした国策投資会社、中国投資有限責任会社(China Investment Co.,Ltd.、以下「中国投資」)の設立を発表した。本年9月に営業を開始する予定で運用資産は2,000億ドルとなることが決まっている。その後5月には、上場を控えた米国のヘッジファンド、ブラックストーングループへの30億ドルの出資を発表、世界を驚かせた。投資先は、地域別では、アジア、アフリカ、中南米など、業種別では、鉱業、インフラ、製造業が有力視されている。この中国投資が呼び水となり、中国企業の対外直接投資が加速する可能性があり、いまから投資先(国)との摩擦を心配する向きがある。とはいえ、その実態は国有企業と民営企業により分けて考える必要があろう。

                                                                                                                  即ち、国営のエネルギー産業、それに付随した製造業、運輸業並びにその他中国を代表するような大型国有企業は、国策にそった動きをするはずなので、少し背伸びをしても、一定規模の外国企業を買収するような動きに出る可能性はある。とはいえ、これまで中国企業が外国の大企業を買収した例は数えるほどで、明らかに失敗と思われる投資もあるなかで、嘗て日本企業が円高とバブルの勢いで海外企業、不動産を買い捲って失敗したようなことになるのか、意外としぶとさを示すのか、これから見極めなければならない。又、これまで高度成長下での成功体験を持ち合わせない中国企業が、西側先進国のような成熟した経済社会における企業を買収した場合、どれだけ対応できるのかという点も興味ある点ではある。

                                                                                                                  とはいえ、日本サイドとしては必要以上に構える必要もない。中国企業にとって現在最大の機会を与えているのは中国国内であり、しばらくは、中国国内の投資でも手が回らないくらいだからだ。中国企業でも本当に優秀な人材は限られており、後は取捨選択の問題だ。今後中国のバブルがすこし冷めてくれば(または崩壊する)、より成熟されたビジネス感覚のなかで日本への進出を目指す企業も増えてくるかもしれない。それはそれで大いに歓迎すべきことだ。 こうした動きは、むしろ日本企業にとってもビジネスチャンスであると捉えるべきであろう。これまでの様な、日中企業の一方通行から双方通行に変わることにより、日中の経済構造はより奥行きを持ったものとなってくるものと予想される。特に日本の技術活用という意味で大きなビジネスチャンスが生まれてくる可能性がある。

                                                                                                                  中国企業の日本進出に伴い、却って、日本から中国に対する色々な形の技術、ノウハウ供与が盛んになる可能性がある。中国企業が、日本に現地法人を設けたり、日本企業を買収する上での一つの大きな目的は、日本からの技術と技術を持った人材の獲得がある。1980年代から始まった対外開放、外資導入以降、中国側にとって、日中合弁事業を通しての技術導入が主な技術導入の手法であった。とはいえ、破綻寸前の国営企業の救済を目的として80年代から90年代の日中合弁企業は失敗事例が多く、最近では中国側も敬遠するくらいであり、少なくとも、現状では技術導入の有力な手段とはなっていない。又、資本提携を伴わない技術導入はどうかといえば、日本企業がロイヤルティーの支払いと技術の漏洩を心配してなかなか本格的な動きにはならないのが現状のようだ。

                                                                                                                  20070830094811.jpg
                                                                                                                  日中企業提携の意義を見直す気運を示した中国の雑誌
                                                                                                                  出所:経済日報《中国企業家》

                                                                                                                  したがって、中国企業がより一歩進んで日本の技術を導入しようとすれば、中国国内で待っていないで、積極的に日本に出てくることは極めて自然な成り行きだ。まだ事例が少ないながらも技術獲得を目的として買収案件が現に出始めている。大手太陽電池メーカー、無錫サンテックのMSK買収や上海電気集団による茨城県の工作機械メーカー池貝買収もこうした事例である。日本の企業が中国企業に買収され、技術が中国企業に渡るというと、なにか、日本が中国にしてやられるようなニュアンスで語られることがあるが、それは多分に日本人の外資アレルギーの症状であると認識するべきであろう。

                                                                                                                  日本においては、すでに特に最先端でなく成熟した技術であっても、中国に持ってゆけばいくらでも有効活用できる日本の技術、人材はいくらでもあるはずだ。そうした技術や人材が日本国内で腐ってしまうよりも、中国に持ってゆかれて有効活用したほうが、どれほど、人類の知的財産資源の有効活用となることか。有効活用により付加価値が生まれるのである。そして、こうした取引が活発化すればするほど日本の企業にとってもビジネスチャンス、延いては日本経済活性になることは間違いない。成熟した技術は中国やその他発展途上国に譲り、日本は更に最先端を行くのが、資源のない日本の技術立国としての戦略のはずだ。技術とは、生産技術とは限らない。バイオを利用した環境技術、日本の飲食業界や物流業界の様々な管理ノウハウ、文化娯楽関係のノウハウだって中国企業はのどから手が出るほど欲しがっている。そうした強いニーズに自社の資源をどう活用するかという視点を常に持ち続ける必要があろう。 今後色々な形で日本に進出してくる中国企業が増えてくれば、反面色々な摩擦も増えるであろう。しかし、そうした摩擦を超えてこそ、グローバルなこの世界で生き残ることができる事を中国が証明している。

                                                                                                                  1980年代初頭から、小平が進めた対外開放、外資導入が正にそれだ。当時の中国からすれば生き残りのためのほかに選択肢が無かったともいえるが、それまで全く外国人と接触したことの無い中国企業と日本企業を無理やり政略結婚させ、大きな摩擦の中で、多くの失敗の対価も払いながら、現在の世界の工場の地位を勝ち取ったのである。その結果が現在の中国経済の台頭であり、冒頭に述べた241:1の比率である。国家防衛の立場から見れば、中国は241の人質を手に入れたようなものだ。相手を自分の懐に引き入れて、それでも主体性を失わない高等戦術である。このくらいの図太さがないとこれからの世界では生きてゆけない。

                                                                                                                  ビジネスチャンスは、時事通信社が発行している時事速報上海便に連載しております。
                                                                                                                  (毎月第四金曜日に掲載)

                                                                                                                   
                                                                                                                  CMSならドリーマASP