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新年あけましておめでとうございます。
新年が皆様方にとって良い年でありますよう心からお祈り致します。 新年に当たり、2015年の日中関係を振り返り又同時に今年の日中関係を考えて見たいと思います。 2015年の中国情勢を振り返り、私の印象に残っているのは以下の諸点です。 1.習近平体制が権力をほぼ掌握したという印象を強めたという事。 これは、あくまでもビジネスマンとして中国で生活する中での実感、感触と言ったところです。 新政権設立後は、新たな政策よりも汚職摘発ばかりは目立ちましたが、汚職摘発イコール権力掌握の過程であったのだなと感じました。 外から見ている印象としては、摘発が進むにつれ、政権が安定し、安定するともない新しい政策が出てきたという印象です。 政権発足当初、李可強が唱えた経済政策は、国有権益の民間へ開放するなかで経済を活性化する部分もあったと思います。上海浦東地区で施行された自由貿易地区がいい例だと思います。 当初自由貿易地区においては、これまで国有資本が独占していた分野の一部を外資、内資に拘わらない民間に開放するということで始まり相当な期待感を持って迎えられたのですが、 時間が経つにつれ、具体的な細則が出されるにつれ骨抜きされてきた印象で、最後に残ったものは、外資にとって特に目新しいものは多くありませんでした。 汚職の取り締まりが本格化してきたのは、それからだと記憶しています。 これはあくまでも私の類推ですが、骨抜きにしたのは、強大な権益を有しその権益を切り崩す動きに抵抗したグループがあったからであり、汚職摘発の一番のターゲットもこうした抵抗勢力であったのではないかと見ています。 ある意味、抵抗勢力を潰すために汚職摘発という名義を利用したという部分もあったのかもしれません。 こうした、摘発の嵐が一段落するなかで、権力の掌握が進み、新しい政策も出すことが可能となったのではないでしょうか。 AIIBをはじめとした外交上の攻勢や、株価市場については、暴落ばかりが注目されておりますが、元はと言えば、長い間低迷していた株式市場を活性化し、停止していた新規上場も促進させようした前向きの動きから出たものです。 株式市場については、今回の一連の問題により、株式市場の本質的な問題が炙り出せれたはずで、現政権も改めてそうした問題を認識したのではないかと思います。 最近では、一人っ子い政策の廃止など、内政に関わる新たな施策も出てきております。 領土問題については、権力基盤が強まればそれだけ弾力性を持った運営が可能になるという点はあると思います。 日中関係も同じです。中国経済の行き詰まりを打開する上で、日本との経済関係の活性化がプラスの材料になることは明らかで、 そのためには日本ともうまく妥協する必要があり、妥協するだけの余裕があるかどうかも、政権の安定次第と言えるのだと思います。 最初にあげた、国有権益の民間へ開放、特に外資については、真新しいものは見当たりません。 一部の超大手の民間企業はすでに享受していると見る向きもありますが、それが一般の中国企業と外資にそのおこぼれが回ってくるにはまだ時間がかかるかもしれません。 ただ、政権が安定しているのであれば、その必要が出てきた場合、そうした政策をとる弾力性は持ち合わせていると言えると思います。したくても、できないよりはずっといいと思います。 そういう意味で、外資にとっても、少しばかりは期待できるポジションになったといえるかもしれません。 とはいえ、そうした権益のおこぼれにあずかることができるのは、まずは、中国の内資企業であるはずで、外資であるならば、政治力も行使できる国際金融資本などでないと難しいかもしれません。 日本でもかつてそうだったのではないでしょうか。 ほとんどの日本企業を含んだ一般外資としては、まずは、中国の内資企業の開放されることにより、中国の国内経済が活性化し、その中で経済的なメリットを獲得する、 そうした地味な路線を目指した方がいいし、そうするべきではないかと考えております。 中国の現状の経済情勢であっても、まだまだそうしたチャンスはあるはずです。 ⒉中国の世界戦略の再認識。 中国が主導したAIIBの発足は、改めて中国の独自の世界戦略を意識させられました。 中国の世界戦略がどれだけ未来を見据えた成熟したもので、中国の世界の平和、発展に起用するものか、それは別の問題と思います。 日本のメディアを見ていると、どちらかというと、あまりにも自国に利益優先の強欲的な印象を受けてしましますが、 では米国がどうかと立ち止まって見ていると、どっちもどっちと言える部分もあるのかなと感じます。 とはいえ、いずれにせよ、中国が米国の世界秩序とは違った独自の価値基準を持って世界戦略を構築すようとしている意思を強く感じることができたと思います。 米国の世界戦略に基づくアジア開発銀行に正面から競合するAIIBを立ち上げたのですから。 昨年私のコラムでは紹介しましたが、中国国内でもAIIBがうまくいかかないと見る向きもありますが、 仮にそうだとしても、中国がそうした意思を持って、それを表に出そうとしているということがここではしっかり認識しておく必要があると私は思います。 そこには、これまで中国の外交政策であった韜光養晦(とうこうようかい)から踏み出そうとしている印象を感じます。 韜光養晦とは、簡単にいえば、中国が十分な力を蓄えるまでは国際社会ではあまり目立たないようにおとなしくしているということかと思いますが、 そこからはみ出すということは、一定の力がついてきたと認識の裏返しとも言えると思います。 最近、中国のある友人からこのような話を聞きました。 2001年の911テロによって、米国の関心が、中東とアフガンのテロとの戦いにクギ付けになり関心がそちらに向いている間に力を蓄えることができたと。 その結果が、最近に動きにつながると見るとなるほど理解できる部分があります。 とはいえ、米中は、経済的には深く提携が進んでいる部分もあり、結局米国も裏では中国と手を握っているのではという見方も強いですね。 私も、そう思っておりました。 ただ、最近、AIIBと南沙諸島の問題を契機に、米国の警戒感がこれまでの10年とは違うレベルに入ったらしいとの話を信頼できる欧米の金融筋から聞きました。 この点は私の専門外でなんともいえませんが、今後注意してみてゆきたいと考えております。 ⒊今年の日中関係は? 私の現状認識は以下の通りです。 (1)政治的には、日中両国とも政権が比較的安定しているのでそういう意味ではお互いに弾力性を持った対応がしやすくはなっているはず。 尖閣問題も、お互い睨み合いで、ある意味安定している。 とはいえ、歴史問題、安保法制改正にともなう自衛隊の海外展開については、 これからも中国は牽制を続けてくるはず。 (2)経済的には、日本は引き続き中国からのインバウンドに対する期待感が高い。この流れ、ビジネスチャンスは今年も続く。 多くの日本企業は、新たな対中事業展開については、まだまだ現状維持、様子見感が強い。 中国企業は、日本の産業技術、サービスのノウハウに対する期待感が高いが、日本側の警戒感も根強く、これから一つ一つ成功事例を積み上げて行く段階かも。 昨年インタビューした中国の友人がいいことを言っておりました、「誰もが何をしたらいいかわからなくなっている状態、行きずまって時にこそ、変化が、そしてチャンスが生まれる。」 この言葉を信じて新しい年に、新しい気持ちで船出したいと思います。皆様のご多幸、ご発展をお祈りいたします! |
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