・武漢艾可亜人材諮詢有限公司
                                                                                                                  中国の構造変化に対応できている企業
                                                                                                                  年の初めは明るい話で始めたいものである。

                                                                                                                   2015年12月28日の日経ニュースメールで、「世界の企業、中国で苦戦 構造変化に対応できず」とあった。 

                                                                                                                   中国の景気減速が世界の企業業績に影を落としており、米ゼネラル・エレクトリック(GE)は中国でインフラの受注が減り、韓国の現代重工業も建設機械やプラントが低迷していると。欧州や日本の企業も戦略の見直しを迫られている。一方で米ナイキなど消費関連の企業は好調とのこと。安定成長に向け第3次産業を育成する中国の経済構造改革が進むなか、業績が二極化する兆しもあると。

                                                                                                                   ある意味、これは自然の摂理というものであろう。構造変化に対応できないものは、会社であっても、個人であっても、生物であっても淘汰される。中国では、経済のファンダメンタルが、またある意味その経済構造さえも、その時々の政策により劇的に変わるので、特に身変わりの速さが必要と言える。
                                                                                                                  私の周辺をみていても、インフラ、建機に絡む業界は確かに厳しいようだ。とはいえ、建機などの分野で、リーマンショック後の大判振る舞いで、未来の需要を先取りした部分もあるので、トータルで見たらどうなのであろうか。一方で、国際市場とアクセスしている自動車、電子に関連する分野では、調子いい企業とそうでない企業と別れるようだ。

                                                                                                                   前々回のコラム「VWを救った中国の税制改革」で紹介した、ゴルフをしながら話を聞いた日本とドイツの企業の話が面白かったので、後日場所を上海市内の居酒屋に変えてさらに色々と話を伺った。そこには構造変化に対応しながら、生き残りをかけたそれぞれの戦略を垣間見ることができた。キーポイントを整理すると以下の通り。

                                                                                                                  ⒈ 日系コネクターメーカー

                                                                                                                  ○要点

                                                                                                                  1)中国企業向けに販売を伸ばしているのは当然中国人社員。

                                                                                                                  2) 当社では年功序列は一切ないと宣言した。

                                                                                                                  3)若い社員でも業績を上げれば翌年の月給とポジションが確実に上がる。

                                                                                                                  4)月給レベルは相場並みだがボーナスは最低1カ月として個人業績に連動させて上限は定めていない。

                                                                                                                  5)日系企業中心の現地法人は売り上げが前年比でダウンしている所が多い中、当社は現地法人設立以来増収を続けている。

                                                                                                                  6)顧客中国企業の業績は比較的堅調で、来年も今年以上の売上げ増を見込んでいる。

                                                                                                                  7)今後の課題は移転価格税制、本社は関係会社取引で適正な付加価値を盛り込んでいるが、急な円安で現地法人側の粗利が増える傾向にあり、日本の国税から指導が入らないか懸念するむきもある。

                                                                                                                  8)コスト面では銀行の為替の手数料がバカにならない。邦銀を使っているが、明らかに日本よりも高い。なんとかならないか。

                                                                                                                  ○コメント

                                                                                                                  1)本社の理解、支援、この会社の製品の優越性、総経理の戦略、管理能力があってのこととは思うが、現地従業員の士気向上はやはりメリハリのある処遇が一番ということのようだ。

                                                                                                                  2)いくら処遇にメリハリがあっても、売り上げを伸ばすだけの経営資源、戦略がなければ現地社員は力を発揮できずに腐ってしまうので、そこは経営側の問題だ。

                                                                                                                  3)この総経理は中国語も堪能で中国企業の懐に入り込むタイプ。こうした、人材はどうしても必要だ。ただ、中国語はできなくとも、現地社員をうまく使ってうまく中国企業と付き合っている人はいくらでもいる。

                                                                                                                  4)いつも気になるのであるが、部下の中国人社員は業績給でも総経理本人の給与はどうなのであろか? 業績が良くなっても、それほど変わらないそうだ。逆に業績が下がっても大きくは変わらないと。総経理は、このまま業績を伸ばし続ければ、将来日本でボード入りするなどの処遇を受け、バランスが取れてくるのかもしれない。ただ、日本企業としていつまでもこれでいいのか、中国に限らず、もう少し世界の平均値によらないと競争力が弱くなるのではないか、いや日本は文化的に特殊だからいまのままでいいのか、なかなか結論がでない問題だ。この業績を上げ続けるこの総経理が今後この日本の会社でどのような処遇を受けてゆくのか大いに興味があり、個人的には見守って行きたいと考えている。

                                                                                                                  5)移転価格の問題は、十分気をつけないといけない。日本の国税が立てば中国の国税が立たないということになるからである。中国側からのリスク分析も勧めた。

                                                                                                                  ⒉ ドイツ系自動車部品メーカー

                                                                                                                  ○要点

                                                                                                                  1)中国でも、欧米企業を中心に日系企業にも販売している。

                                                                                                                  2)当社の販売戦略は、当社部品をできるだけ、モジュール化し、さらに当社の部品を使ったアッセンブリー技術も自社で保有し、部品と一緒に技術とエンジニアリングも売ることにある。欧米企業、中国企業はこのやり方で全く問題なく販売できている。特に中国企業は、もともと技術の蓄積がないので、技術セットの販売を歓迎し喜んで買ってくれる。実際、中国企業向けの販売が伸びているし、価格競争に巻き込まれることもない。

                                                                                                                  3)一方、日本企業は、生産技術は、顧客が自社で保有し、部品サプライヤーには、単に自社が要求するスペックの部品を供給を求めるだけで、何に使うかも教えてくれないこともある。このため、当社の最先端の部品を最先端の製造方法とセットで販売しようとしても、なかなか噛み合わず苦労している。


                                                                                                                  ○コメント 

                                                                                                                  1)こうした日本とドイツの産業構造の違いは、それぞれメリットデメリットがあるのだと思う。

                                                                                                                  2)中国においても、日系企業に対する販売では日本のやり方でいいのかもしれない。

                                                                                                                  3)ただ、技術の蓄積がない中国企業には、ドイツ企業のやり方はいいようだ。部品も技術も一緒に売ってくれるのだから、お金持ちの中国企業にとっては手取り早い話だ。中国企業向けに販売を増やしたいのであれば、この方法は検討に値するかもしれない。部品だけでなく、技術、ノウハウといったソフトパワーをセットで販売するということである。自社にそういう人材がいなければ下流の人材をスカウトする手もあるのでは。

                                                                                                                   
                                                                                                                  CMSならドリーマASP